「身近な海をもっと知って欲しい」
海の生き物一筋の館長が目指す
地域に根差した水族館
2004年にリニューアルし、新江ノ島水族館としてスタートしたえのすい(通称)。2018年から館長を勤める竹嶋徹夫さんに、水族館、海の生き物の魅力、楽しみ方をお聞きしました。
−えのすいは、どんな水族館ですか?
ここ藤沢の海岸線は、鎌倉から茅ヶ崎まで約5km。砂浜あり磯あり、多様で豊かな自然の宝庫です。それを実際に目で見て感じられる、地域に根差した水族館を目指しています。
私は水族館に勤めて43年になります。生まれ育った兵庫県西宮にも近くに海があり、その頃から海に関わる仕事につきたいと思っていました。海の生き物は何でも好きですね。彼らがなぜそこにいるのか、どこから来たのか、どんな風に生まれて育ってきたのか、そして水族館でみんなに見、知ってもらうにはどうすればいいのか、常に考えてしまう、もう職業病ですね。
相模湾は遠浅の砂浜から磯、そして深海まで、様々な環境があり、そこに多様な生物が暮らしています。これを来場者の方に見て欲しいのですが、深海の生物や短命のものなど、飼育がむずかしく、お見せできないような生き物はまだまだたくさんいます。そこが課題ですね。
−お気に入りの海の生き物は?
えのすいで飼育している生き物には、どれも愛着があります。シラス、クラゲ、イルカも。シラスは別の水槽に移すだけで死んでしまうほど弱い生き物で飼育がとても難しく、繁殖し常設展示されているのは、世界でも当館だけです。目に見えないくらい小さい稚仔魚がそのまま成魚の形になるまで、日を追って観察できるようにしています。
大水槽では相模湾の環境を再現しており、マイワシの群れを追う大型魚など、実際の海中での様子を目の当たりにできます。
それらの中で、私が朝出社してまず必ず確認に行く一匹がいます。1984年に境川で捕獲された「イセゴイ」という魚で、それまで相模湾での捕獲記録がなかった珍しいものです。そこから36年も生き続けていて、水槽の中を悠然と泳ぐ姿は、まさにえのすいの主、毎朝「今日も元気だね」と挨拶するわけです。
−自粛明け以降、お客さんは戻っていますか?
5月31日から営業を再開。地元を中心に来場者は戻ってきています。小学校の遠足や小さいお子さんがいらっしゃるご家族などにご来場いただいております。中高生、そしてシニアの方たちにも、お孫さんを連れてゆっくりのんびり見て欲しいですね。
以前オフは、仕事絡みですが伊豆や沖縄などにスキューバダイビングに行っていました。還暦を過ぎてからは、高校時代以来のヨット(セーリングカヌー)にはまっています。県民セーリング大会などレースにも出場しています。小型で風だけが頼りなので静かで海面が近い。クラゲとかトビウオが間近に見えることもあり楽しいです。考えてみると、オンもオフもずっと海ですね。
竹嶋 徹夫(たけしま てつお)プロフィール
1953年、兵庫県生まれ。東海大学海洋学部卒。1978年、旧・江の島水族館入社、相模川ふれあい科学館所長、世界淡水魚園水族館 アクア・トトぎふ勤務を経て、2006年から新江ノ島水族館勤務。2018年から館長。
新江ノ島水族館
藤沢市片瀬海岸2-19-1
0466-29-9960
https://www.enosui.com