みなさん、お久しぶりです!
今回は、『ペットの嘔吐』についてお話してみたいと思います。
頻繁に発生する嘔吐。原因はさまざま
嘔吐は、日常よく目にする代表的な消化器症状の一つで、動物病院ではほぼ毎日見られます。ワンちゃんやネコちゃんは、人よりも頻繁に嘔吐をする傾向があります。
🔳嘔吐はなぜ発生する?
嘔吐とは、口腔からの胃内容物の激しい反射的な排出で、脳の嘔吐中枢を刺激することで起こります。通常、過剰な涎、吐き気、腹筋と横隔膜の波打つような動きを伴います。吐物は食物あるいは液体(透明、胆汁色、血液色、それらの混合)です。その動作は沈うつ、震え、隠れる、快適な場所を探す、流延、口をクチャクチャ舐める、何度も飲み込んだり吐こうとするなどの前駆症状があります。嘔吐物は消化されていることが多く、動物がそれを食べることは少ないです。
嘔吐を誘発する疾患は、ストレスや不適切な食事などによる胃腸の炎症にとどまらず、緊急性の高い消化管の閉塞、内分泌や腎臓・肝臓などの機能不全、それに伴う代謝異常、神経疾患など、原因は数十種類もあります。
割とよく見られる早朝、空腹時の黄色~茶色、泡沫状の消化液のみの嘔吐は、空腹時間が長いための胃酸分泌や胆汁逆流などが一般的と考えられており、給餌回数やタイミングをずらすことで、改善できる場合もあります。
🔳嘔吐の原因となる病気は
嘔吐を示す代表的な病気には、心因性、脳圧の亢進(頭部の外傷、てんかん発作、腫瘍など)、前庭疾患(老齢性、内耳の炎症など)、消化管の問題(盗食・過食、食物アレルギー、異物、薬物、細菌性、ウィルス性、寄生虫性、腸閉塞、胃拡張・胃捻転症候群など)、消化管以外の腹腔内病変(腎、肝・胆道疾患、膵炎、腫瘍、横隔膜ヘルニア、子宮蓄膿症など)、代謝性疾患(尿毒症、電解質異常など)、内分泌疾患(副腎皮質機能低下症、糖尿病など)が挙げられ、必ずしも消化管の異常によるものではないことが理解できるかと思います。
一方、同じく飼い主さんが「吐いています」と訴える症状の一つに「吐出」があります。吐出とは咽頭あるいは口腔への食道内容物の受動的な逆流性移動のことです。
吐出の原因は食道で、嚥下が困難な場合では口腔か食道にあります。吐出物は未消化の状態がほとんどのため、それを食べようとすることが多くあります。
吐出を示す代表的な病気には、巨大食道(重症筋無力症、副腎皮質機能低下症、多発性神経炎など)、食道運動の障害によるもの、異物、腫瘍による狭窄、食道炎、食道憩室、乗り物酔い、熱中症などが挙げられます。
危険な兆候の可能性も。迅速な対応を
嘔吐の中で危険度の高い病気をいくつかご紹介します。
🔳危険度の高い嘔吐の病例
胃拡張・胃捻転症候群は大型犬・超大型犬に多く、食後の運動中あるいは直後に吐き気や嘔吐を起こすのが特徴です。胃が捻じれて消化機能が停滞し、血流が遮断され、放置されるとショック状態から死に至る緊急性の高い病気です。
子宮蓄膿症は子宮に膿が溜まる病気で、高齢の未避妊雌で元気食欲の低下、多飲多尿が見られます。進行すると腎機能の低下、子宮が破れ腹膜炎を起こし、短時間で死亡する同じく緊急性の高い病気です。
副腎皮質機能低下症(アジソン病)はわずかなストレスでショック状態に進行するため迅速な対応が必要です。
誤食は不適切なものを飲み込んでしまい、胃や腸の閉塞や穿孔を起こします。特に若い個体では高い確率で発症しているので、十分な注意が必要です。
🔳まずは、かかりつけの病院へ
「嘔吐」の症状が見られましたら、とりあえず、かかりつけの動物病院にご相談されて下さい。経過を見ることもひとつの選択ですが、1日様子を見るということは私たち人間の4~5日様子を見ることと同じになります。早期発見・早期治療が、やはり動物たちにも求められます。
それでは、また…。
Have a わん&にゃんderful day !
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■筆者紹介
永田浩之
獣医師
のっぽ動物病院 院長
神奈川県獣医師会湘南支部長
湘南臨床研究会会長
鎌倉市生まれ
神奈川県立七里ガ浜高等学校卒業
北里大学獣医畜産学部獣医学科卒業
北里大学大学院修士課程獣医畜産学専攻修了
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