【はぐくむ・つながる・こどもとおとな】第27話「思春期って③大人になっていく準備(男子編)
湘南ママたちから絶大な人気と信頼を誇る、認定子育てアドバイザーの宗藤純子先生の子育てコラムです。今回は、『男の子の思春期』についてのお話です。
*
思春期男子の変化への向き合い方
思春期の子育て講演やお話会で、女性保護者からよく質問されるのが、「『思春期男子のココロとカラダの変化』への向き合い方」です。
【はぐくむ・つながる・こどもとおとな】第26話「思春期って②大人になっていく準備(女子編)でも寄稿しましたが、現在保護者にあたる方々が小学生だった頃は、女子生徒だけを対象に「月経」の授業が行われることが主流でした。そのため男子生徒は、女子の月経の話どころか、自分の「精通」や二次性徴について学校で学ぶ機会はほとんどありませんでした。
そのため現在保護者の男性に、二次性徴について、どこで、どのように学び知ったかを質問しても、「覚えていない」「先輩から教えてもらったかな?」「漫画や雑誌からかな?」と曖昧な答えが返ってくることがよくあります。
女性保護者としては、男の子の思春期の身体の変化については、男性保護者にお任せしたいところですが、「それは自然に知ることだからわざわざ教えることはない」「自分もきちんと教わったわけではないから、教えられない」「自分で自然に知るから大丈夫」などと言われてしまったことはありませんか。
確かに、ネット環境が普及した現代は、男性保護者が思春期だった頃に比べて、簡単に情報を集められる時代です。しかし、さまざまな情報の中には、つくられた情報や、暴力的かつ刺激的な動画など子ども達にとって必ずしも安全安心とは言えない情報も数多く存在します。
男子が自分のカラダについて知りたい!と思う時期に、カラダの仕組みや、性について科学的で正しい知識を得ることは、自分のカラダを大切にすることにもつながります。ですから、彼らが相談したい、知りたいと思ったタイミングで、信頼できるサイトや相談できる大人や医療機関につながるよう、われわれ大人もサポートできるといいですね。
男女ともにお互いのカラダの仕組みや知識を得て理解していくことは、大人になる上でとても重要なことです。それは、決して恥ずかしいことではなく、とても大切なことなのです。
また、自分のカラダは自分のもので、YESかNOかは自分で決めて良いのです。このような「同意」や「バウンダリー(境界線)」についても、思春期の一環としてお話できると良いですね。
男子が大人になっていくための準備を安心して行えるように、父親も母親も一緒になって男子の思春期を理解していけたらと望みます。
■参考
【はぐくむ・つながる・こどもとおとな】第13話「自分のからだは自分のもの!だから自分で決める!」親も学びが必要な時代③
なお、2023年6月16日、『同意なしの性行為は処罰対象』改正刑法が参院本会議で可決・成立され、“性交同意年齢”は、『13歳以上』から『16歳以上』に引き上げられました。日本において”性交同意年齢”の法律が定められたのは明治40年で、110年もの間改正されず、各国と比較すると最も低い年齢でした。2008年には国際連合から性交同意年齢の引き上げの勧告を受けていましたが、この度ようやく刑法が改正されるに至りました。
思春期男子のココロの変化
思春期は変容する時期で、蝶のサナギの時期に例えてお話しています。
サナギの中で蝶の幼虫は、ドロドロにカラダを溶かしクリーム状になるそうです。
思春期時期の子ども達も自分自身に関心が向き、他人からどう見られているか気になったり、他人と比べ悩むことが増えてきます。男子はプライドも出てくる時期でしょう。自分に対してイライラしたり、親に対して甘えと反抗心が同居し、心が葛藤する時期です。まさにドロドロな時期とも言えます。
きっとすべてが自分の思う通りにはいかない経験もすることでしょう。
でもこのような時期を経て、子ども達一人ひとりが個性豊かな大人になっていく姿を、われわれ大人達は応援していきたいですね。
幼虫がサナギから蝶になり大空に飛んでいくように、この先、彼らが自分を信じて社会の大海原に旅立っていってほしいと願いながら。
思春期男子のカラダの変化
この時期の男子はココロだけでなくカラダも大きく変化しますが、その変化には個人差がありタイミングもそれぞれです。
男子は脳下垂体の前葉というところから性腺刺激ホルモンが分泌され、その刺激を受けて、精巣から「テストステロン」という男性ホルモンが分泌されます。このテストステロンの働きにより、大人になる準備として体の変化が生じます。身長が1年で急激に伸びる男子もいますが、それ以外にも以下のような変化が起こります。
・ 精巣、睾丸が大きくなる
・ 陰嚢の色が変わる
・ 陰茎が長く・大きくなる
・ 陰毛が生えるようになる
・ 精通がはじまる
・ 変声(声変わり)がはじまる
・ 脇の下、ヒゲが生えてくる
・ 肩幅ががっしりと広くなる
・ 筋肉が発達する
・ ニキビが出てくる
・ 体臭が出てくる
*
※「思春期早発症」と「思春期遅発症」の疑いがある場合 (男子は泌尿器科で受診相談してください) ◆男子の場合「思春期早発症」・9歳までに精巣(睾丸)が発育する ・10 歳までに陰毛が生える・11 歳までにわき毛、ひげが生えたり、声がわりがみられる ◆男子の場合「思春期遅発症」・14歳までに精巣の大きさが2.5cm以上にならないもの ・陰毛は15歳までに生じないもの・16歳以上でひげや声変わりが生じないもの |
男子の二次性徴
男子も女子同様、10~15歳ごろに二次性徴があらわれます。なかでも射精が起こることを「精通」といいます。
「精通」については、小学校4年生の保健で学びますが、教科書には「精子はいろいろな液体と混ざりあって精液となり、からだの外に出されます。これを『射精』といい、はじめての射精を精通といいます」と記載されています。しかし教科書の内容だけでは、腑に落ちない男子達が多いのが実情なので、絵本や書籍などを準備しておくことをおすすめします。
高学年男子と保護者のお話会もおすすめです。(息子さんが母親と一緒に聞ける年齢は中1の夏ごろまでです)
開講・開催(個人的も含む)されたい方はお気軽にお問い合わせください。
※
精通は、13歳で迎える人が一番多いようですが、早い男子は10~11歳、遅い男子は18歳くらいと個人差があります。また、「いつ精通をむかえたか、よくわからない」という人も多いようです。
精通の大切さについて知識がないまま精通を迎えると、自分の精液に嫌悪感を持ち「汚い」と思ってしまう男子もいるようです。「汚い」というイメージが、歪んだ性への価値観につながってしまうことは避けたいところです。そのためには肯定的に受け取れる正しい知識を得ることが大切です。
また、自分のカラダやプライベートゾーン(下着で隠れているところ)で起こることを「大事なこと」として受け取り、セルフプレジャーのマナーや自分の下着は自分で洗うことなどを思春期前から男子に伝えておけると良いですね。
包皮がかぶる箇所の清潔さや自分で洗えるように伝えておくこと、立っておしっこをする際のことや男子の健康にかかわることなど、幼いころからお風呂などで母親から伝えられることもありますから、コミュニケーションをとってみてください。
ここで思春期の子どもたちが自分で読める本や、保護者が知っておきたい書籍等を紹介いたします。
思春期男子と保護者におすすめのココロとカラダの本
◆男の子が大人になるとき
監修:岩室紳也 絵:中村光宏 出版社:少年写真新聞社
【内容説明】子どもから大人へと成長していくまっただ中は、荒れる海を航海しているような時期なんだ。その時期にからだやこころとしっかり向き合い、悩みを仲間と分かち合ってみよう!がまんや思いやりの気持ちを学び、そして自分だけの宝物を見つけるために。 【目次】 大人に近づくからだ(大人に近づくからだ;変化が起こるのはなぜ?;どんな変化が起こるの?;こころの変化;女性とのちがい;女の子の「月経」って?) 精通(性器のしくみ;射精;尿と精液;夢精;愛の反対は無関心) 男の子のこころとからだのふしぎ(マスターベーション;包茎;比べてなやもう;ほかの人への気持ち;なやんだ場合は)(出版社紹介より) |
◆13歳までに伝えたい男の子の心と体のこと
著者:やまがたてるえ マンガ:藤井晶子 出版社:かんき出版
●男の子の体と心のことをマンガでやさしく・わかりやすく伝えます。 ●男の子が「気になっていて知りたいこと」「なかなか人に言えないこと」「親御さんも説明しにくい体と心のこと」を ●自分のことも周りの人のことも大切にできる大人になるため ●親自身も学べ、小学・中学生の男の子に安心して手渡せる内容の教育マンガです。 【内容説明】 自分も相手も大切にできる大人になるために。家族で読んで学べる!教科書にのってない男の子の心と体の変化、思春期のこと、性のこと。 1章 体はだんだん大人になっていく 2章 男の子は成長する!?男の子の体のこと 3章 自分の体と仲良くするために 4章 女の子も成長する!?女の子の体のこと 5章 好きにもいろいろある! 6章 ネットにはご用心! 7章 人を好きになるときに大切なこと 8章 大切なセックスの話 9章 自分を大切にできる大人になろう(出版社紹介より) |
◆オトコの子の「性」思春期男子へ13のレッスン
監修:村瀬幸浩 著者:染谷明日香 マンガ:みすこそ 出版社:合同出版
思春期男子の尽きない悩みをあすか先生がすっきり解決!自分と大切な人を守るために、科学的な正しい性の知識を身につけましょう!大人に近づくこころ、変化するからだ、誰かを好きになって、それから…?思春期男子の尽きない悩みをあすか先生がすっきり解決! 最近の問題にも触れながら、13のテーマをマンガ+Q&Aでわかりやすく解説。 自分と大切な人を守るために、科学的な正しい性の知識を身につけましょう! あすか先生の授業、開講☆(出版社紹介より) |
◆子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!
著者:アクロストン 制作協力:にじいろ 出版社:主婦の友社
思春期の子どもの頭の中は、親の想像以上に性の悩みと不安であふれてる! 古い性の知識をアップデートして、子どもをサポートできる親になろう。部屋にこもりがち、会話が続かない……、思春期の子どもとはコミュニケーションをとるのさえひと苦労。性の話をオープンにできる家庭はそう多くありません。一方で、性の悩みが本格化し、具体的になっていく年齢でもあります。親としては「ちゃんとわかってるのかな…」「ほうっておいていいの? 」と心配になりますよね。そこで、思春期保健相談士で性教育に関するツィッターも人気のにじいろが、実際の思春期の子どものリアルな声を集め、医師夫婦で性教育を広める活動を行うアクロストンがそれらの疑問や悩みにお答えしました!この1冊を読めば、思春期の子どもの親として知っておくべき性の最新知識のすべてが学べます!! (コンテンツ紹介) CHAPTER 01 「子どもたちの頭の中、どうなっている? 」思春期のからだの変化 編 CHAPTER 02 「子どもたちの頭の中、どうなっている? 」セックス 編 CHAPTER 03 「子どもたちの頭の中、どうなっている? 」恋愛・性の多様性・ジェンダー 編 (出版社紹介より) |
◆イマドキ男子をタフに育てる本
著者:岩室紳也 出版社:日本評論社
なぜ男の子はキレやすくなるのか。性・エイズ相談で活躍する医師が、乳幼児期から思春期まで、 失敗しない男子育ての秘訣を指南。(出版社紹介より) |
*
ーーー筆者紹介ーーー 宗藤純子(むねとうじゅんこ)
藤沢市在住30年。都内私立幼稚園教諭・主任9年を経て保育士・
・
・鎌倉市産科診療所「ティアラかまくら」
・「子育ては個(性)育て。己育て」人間教育を軸に行政・
幼小中学生、年齢に応じた「いのち・こころ・からだ」
・保育者向け雑誌「POT」
・株式会社OfficeLadybird代表取締役
◆Web サイト: http://junkomuneto.com
◆子育ての会ベビーぴよぴよ012連絡帳
*****