【はぐくむ・つながる・こどもとおとな】第26話「思春期って②大人になっていく準備(女子編)
湘南ママたちから絶大な人気と信頼を誇る、認定子育てアドバイザーの宗藤純子先生の子育てコラムです。今回は、『女の子の思春期』についてのお話です。
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昭和世代の性教育
「保護者のみなさんはご自分のカラダやココロの話を、何年生の頃に聞いたか覚えていますか?」
保護者への講演や、母と娘の月経のお話会で、女性保護者にこのような質問をすると、「いつだったかしら?」「高学年だったかしらね」等、はっきり覚えていない方がほとんどです。
私自身も、小学4年生か5年生の頃、真っ黒なカーテンで閉ざされた理科室か視聴覚室で、OHPで映し出された「月経について」という文字を観た記憶しかありません。むしろ印象的だったのは、そこには女子しかいなく、男子児童は校庭で遊んでいたことです。この印象はずっと脳裏に焼き付いていて、女子の月経(生理)の話は男子に聞かれてはいけない、男子禁制の話と思いこんでいました。そのためか、月経(生理)が始まった日、父親や男兄弟がいる中でお赤飯でお祝いされたときは、なんだか恥ずかしい気持ちしかありませんでした。
このように昭和世代の私は、性や男女の身体のしくみについて、きちんと知る機会がなく大人になっていきました。今となっては「情報をどこで得ていたのだろう?」と思います。
大人になっていく過程である思春期に、性や身体のことを知ることはとても大切なことで、決して恥ずかしいことではありません。
「自分の身体の変化や他者との違いに悩んだり、比べる必要はない」とあの頃知ることができていたら、もっと自分のことを大切にできたのではないか、『大切なこと』として母親とも話せたかもしれないと思います。
それに、異性の身体の仕組みを知ることもとても大切なことです。
(現在、小学校高学年以上の子どもを育てている女性保護者は、昭和世代の方が多いです。思春期というテーマ以前に、「包括的な性教育」を理解していただくためにも「昭和脳のアップデート!」という記事を連載しているので読んでみてください)
二次性徴に関する現在の教育
かつて女子だけ集められて受けた「月経」に関する授業は、大人になっていく準備である「二次性徴」に関する学びです。
思春期時期になると、男女ともに脳下垂体から性腺刺激ホルモンが分泌されます。
女子の場合、その性腺刺激ホルモンが卵巣に働きかけ、卵巣から女性ホルモン(エストロゲンなど)が分泌されます。
一方、男子の場合は、性腺刺激ホルモンが精巣に働きかけ、精巣から男性ホルモン(テストステロンなど)が分泌されます。
この2つのホルモンにより10~15歳ごろにあらわれるのが二次性徴です。
※「思春期早発症」と「思春期遅発症」の疑いがある場合 女子は小児科、婦人科で受診相談してください ◆女子の場合「思春期早発症」・7歳6ヶ月までに乳房がふくらみはじめる ・8歳までに陰毛が生える・9歳までに生理が始まる ◆女子の場合「思春期遅発症」・13歳までに乳房が膨らまない ・乳房が膨らんでから、初潮がくるまでに5年以上かかる・16歳までに初潮がこない |
現在は、4年生の時に男女一緒に「保健体育」の教科として、二次性徴について養護教諭か担任教諭から学びます。
女子の身体の仕組みや「卵子」「卵巣」「月経」だけでなく、男子の身体の仕組みや「精子」「精巣」「精通」など思春期にあらわれる変化を知る大切な時間です。
思春期の女子が大人になっていくサインとして「生理」(医学的には「月経」と呼ぶ)が起きます。
二次性徴として女子は9、10歳ごろから「乳房がふくらむ」「プライベートゾーンに陰毛が生える」そして「初経(初めての月経)」を迎えます。
※女性保護者のの時代には「初潮」と学びましたが、現在は「初経」と学びます。
月経は大切なもので、女性の身体にしかない「子宮」とのつながりです。
「子宮」という漢字は子どもの宮。この字のごとく、子どもが大切に育まれるお部屋です。お部屋に子宮内膜(赤ちゃんのお布団やベッド)がつくられ、女子たちが大人になっていく準備として、この子宮内膜のお布団をつくってはお掃除して月経血として膣から外へ流されます。
将来赤ちゃんを迎えたいかどうかは自分で決めていくことですが、身体が大人になった証である月経を、思春期を迎えた女子自身が喜びをもって毎月迎えてほしいです。
6年生の女子が、お話会にお母さんと参加してくださったとき、胸の上の方を指さして「わたしのこの辺りにもうひとりの自分がいるような気がして、わけもなくイライラして、弟に八つ当たりしちゃうんです」と話してくれました。思春期時期のこころのイライラを感じていた女子。「こころも大人になる準備をしているね」と伝えました。その後、お母さんから、月経を迎えたと嬉しいお知らせをいただきました。
このようなイライラや不調の原因は、思春期の反抗だけでなく生理の影響など、自分のこころと身体が変化することによる場合もあります。大人になっていく大切なサインを、女子自身が安心して受け入れられるよう見守ってあげたいですね。
また、初めての生理はいつ訪れるかわかりません。「お手紙が届くこともないのよ」と伝えると笑いが起きますが、個人差もありますし、競争ではないので、早い遅いと他者と比べる必要は全くないのです。
生理になったときに戸惑わないように、生理用品のこと、下着のこと、デリケートゾーンケアのこと、それ以外にも困ったときや不安に感じたときは、お母さんや頼れる大人に助けを求めていいんだよ、ということも早いうちから伝えてあげましょう。
またそのような時にしっかり支えられるように、保護者世代も、今一度学びなおしていくことが必要ですね。
親娘で学ぶことの重要性
産科診療所や思春期講座、個人主催の講座などを通して、15年程「母と娘の月経と子宮のお話会」を定期的に開催していますが、そのたびに驚くことがあります。
それは、学校で保健体育の授業を受けたはずの高学年女子や中学生女子で、「子宮」は自分の身体には「ない」「あるかわからない」と思っている子があまりに多いことです。
今ではそのことをまず確認し、その上で、十分に理解が深まるようにお話を進めるようにしています。
また、ぜひおすすめしたいのは、母と娘が一緒に二次性徴に関して学ぶ機会をつくることです。かつて私たち保護者世代が、親と話しづらかったテーマは、実は非常に大切なことだったのです。
思春期の娘さんと身体のことを話せる関係性はとても素敵ですよね。大人になっていく娘さんとの心の土壌づくりのためにも、「母と娘の月小屋(月経&子宮のおはなし)」はおすすめです。
※開講・開催(個人的も含む)されたい方はお問合せください。 性と生の学び – 宗藤純子のPower of Love | 湘南・子育て支援 (junkomuneto.com) |
思春期女子におすすめのココロとカラダの本
保護者のみなさまも一緒にお読みください
◆女の子が大人になるとき
著: 五十嵐 綾 早乙女 智子
出版社: 少年写真新聞社
◆13歳までに伝えたい女の子の心と体のこと
やまがた てるえ (著) 出版社:かんき出版
◆わたしの心と体を守る本
遠見 才希子(著)アベナオミ(漫画)
出版社:KADOKAWA
◆からだこころ研究所
高橋 幸子(著)出版社:リトルモア
◆女の子のからだえほん
作・絵: マティルド・ボディ
作: ティフェーヌ・ディユームガール
監修: 艮 香織 訳: 河野 彩
出版社:パイ インターナショナル
絵本が教えてくれる国際基準の性教育『女の子のからだえほん』 【出版社からの内容紹介】 国際標準の性教育を日本の子どもたち、そしておとなたちへ 本書は、フランスで女の子を持つ2人の母親がクラウドファンディングで制作した性教育のえほんです。からだの構造から、思春期、性自認、性的指向、性的同意、愛などの人権教育に及ぶテーマまで扱った良書で、その公益性が認められ、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の「性の健康と人権」認定マークを獲得しています。日本人が苦手とする性教育のテーマをタブーなく正しく語り、尊厳の本質を明確に教えてくれる本は、やがて社会に出ていく子どもたちが、これからの時代を自由に生きていく力になります。本国で発売後すぐにベストセラーとなった良書を日本の子どもたちそして大人たちにも手にとってもらいたく、日本語版を刊行いたします。 |
女子たちが「健康・安全・幸福」を自ら選択することができるために、「知りたい」知識を重ねながら、自分やまわりの人を大切にする大人になっていけますように。
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ーーー筆者紹介ーーー 宗藤純子(むねとうじゅんこ)
藤沢市在住30年。都内私立幼稚園教諭・主任9年を経て保育士・
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・鎌倉市産科診療所「ティアラかまくら」
・「子育ては個(性)育て。己育て」人間教育を軸に行政・
幼小中学生、年齢に応じた「いのち・こころ・からだ」
・保育者向け雑誌「POT」
・株式会社OfficeLadybird代表取締役
◆Web サイト: http://junkomuneto.com
◆子育ての会ベビーぴよぴよ012連絡帳
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