今や世界で作られる「藤稔(ふじみのり)」
ほかにも品種いろいろ、藤沢はブドウ王国だった!
ブドウの産地といえば、山梨県、長野県、山形県…が有名です。が、藤沢もブドウ園がたくさんあるんです。それどころか、藤沢生まれの品種もあります。今回は、藤沢生まれのブドウの代表選手「藤稔」を中心に、藤沢のブドウのお話をしましょう。8月のお盆前後は、藤沢のブドウの最盛期! この夏はぜひ、市内産のブドウを味わってみてください。
案内人は、 JAさがみの農アンバサダー Lioさんです。
こちらが、藤沢市で生まれた(専門的には「育種した」といいます)ブドウ、藤稔(ふじみのり)です。粒は巨峰よりも大きく、深い紫色が特徴です。
藤沢のブドウ栽培は昭和の、高度経済成長期にさかのぼります。それ以前も、藤沢市内ではモモやナシなどを栽培し、人気を得ていました。長後エリアの果樹農家が「ブドウを栽培したら、もっと喜ばれるのでは?」と考えて、山梨県からブドウの苗を購入しました。昭和48年のことです。
このころ、静岡県の伊豆長岡にブドウ育種の名人がいました。長後の農家の一人が、この名人のもとへ何度も足を運び、技術を学びました。
名人は「ブドウ栽培はカンタンだよ」とこともなげにいいましたが、挑戦する農家にとっては、予想以上に難しかったそうです。
そこで「誰でも簡単に栽培できる品種を作ろう」と、育種に取りかかりました。〝難しかったら新しい品種を作っちゃおう!〟と考える進取の気風は、さすがさがみの農家ですね
いろいろな品種を探す中、気になる品種が2つありました。栽培しやすいけど日持ちがいま一つの「井川682」と、栽培が難しいけど品質の良い「ピオーネ」です。この2つを交配したところ、大粒で、おいしくて、栽培が比較的易しい品種が生まれました。藤沢の大地で実(みの)ったことから、この品種を「藤稔」と名付けました。
育種した農家は、その権利を独占せず、苗や栽培方法を広げていきました。今や、国内外で広く栽培される品種になりました。
かつての藤沢市長さんから聞いたエピソードです。山梨県に出張したとき、現地の人から「ウチでは、こんなおいしいブドウを作っているんです。ご存知ですか?」と藤稔を出されたとか。もちろん、「何をおっしゃるんですか。これは藤沢で作った品種ですよ」と答えたそうです。
藤稔は梅雨入り前に花を咲かせます。
こちらが藤稔の花です。
この後、種無しにする作業(ジベレリン処理)や、粒の数をそろえて大きくする作業(摘粒作業)をして、成長を見守ります。
成熟する前の藤稔は、紫色ではなくて緑色です。
農家は、おいしいブドウができるように、お互いの果樹園を見回って切磋琢磨しています。先輩農家や県やJAの技術担当者からアドバイスを受けたりもします。すべては「おいしいね」と喜んでもらえるためです。
1粒が「ゴルフボールぐらいある」「500円玉ぐらい大きい」ともいわれる藤稔。お口を大きく開けて召し上がりください。
皮の表面の白い粉のようなものは「ブルーム」と呼ばれるもので、ブドウ自身が乾燥から守るために吹いたものです。ブルームは新鮮な証拠です。もちろん、毒ではありませんので、安心してお召し上がりください。(…とはいっても、フルーツを食べる前にはきちんと洗ってくださいね)
藤沢のブドウは、「藤稔」だけではありません。
こちらは「紅義」(べによし)と呼ばれる品種。ガーネット色がきれいですね。平成7年に品種登録されました。
藤沢で育種された品種以外にも
緑色のブドウや…
…黒いブドウなど…
…さまざまなブドウを、藤沢市とその周辺では栽培しています。
農家さんの直売所で特別に撮らせてもらいました。
カラフルでしょ。こんなにたくさんの品種を、1戸で作っているんですね。
藤沢のブドウのシーズンは8月初旬~9月初旬。お盆前後が最盛期です。わいわい市などの直売所のほか、各農家さんの直売所でお求めください。宅配もしていますから、贈答やプレゼントにもおすすめです。
ふじさわのくだもの直売所に行こう!|藤沢市 (city.fujisawa.kanagawa.jp)
例年、8月中~下旬にイトーヨーカドー湘南台店で、品評会と即売会を開きます。
藤沢市内の農家さんが、ご自慢のブドウとナシを持ち寄って、美しさやおいしさ、重さなどを競います。審査が終わった後は、一般販売もします。藤沢でトップクラスのブドウやナシを買えるチャンスです。
この「藤沢市果樹持寄品評会」、今年は8月23日(火)に開催予定です。審査は午前9時から(関係者のみ)。地元産ブドウ・ナシの販売は12時から、出店品の販売は午後1時ごろからを予定しています。
新型コロナなど社会情勢によって状況が変わることもありますから、事前のご確認をおすすめします。
JAさがみHPには、湘南地区の野菜・農産物情報が満載です!
https://ja-sagami.or.jp