動物病院院長、湘南の頼れる獣医師”のっぽ先生”による ペットについての連載コーナー。ペット好きなら知っておきたい獣医学のお話です。
Vol.01「ワンちゃんの熱中症」はこちら!
Vol.02「子犬の社会化」はこちら!
Vol.03「ワンちゃんの皮膚病について」はこちら!
Vol.04「ペットと防災」はこちら!
Vol.05「子猫のお世話について」はこちら!
みなさん、こんにちは!
お元気ですか?
新型コロナという未知のウィルスが世界中を覆った2020年、外出自粛でお家時間が増え、ペットと過ごす時間も長くなりました。
しかしながら、外出自粛が解け、飼い主さんの生活スタイルが変化すると同時に、ペットくん達に何かしらの異変が生じていませんでしょうか?
今回は、ワンちゃんの分離不安症についてお話してみたいと思います。
<分離不安症とは?>
『分離不安症』とは、ワンちゃんが飼い主さんと離れると、その不安や恐怖からパニックを起こすことで発症する様々な問題行動を指します。
この行動は主に、吠える・鼻を鳴らす・破壊行動・排泄の失敗・食欲不振・嘔吐や下痢・抑うつ・流延・呼吸速迫・同じペースでウロウロしたり、円を描いて歩き回る・四肢や尾を過剰に舐めたり、かじったり、毛をむしる等で、これらは不安や恐怖を解消しようとして起こります。
分離不安症になる原因はいくつかありますが、最近私が診察している中で“コロナ禍での分離不安症”が増えていると感じています。
その背景として、ワンちゃんと人が必然的に一緒に過ごす時間が増えたことで、
留守番を経験することが少なくなったり、日中のスキンシップが長くなったりした分、
より甘えん坊になったなどが考えられます。
そして飼い主さんの生活が自粛から徐々に日常に戻り始めたところ、
ペットたちは急に独りぼっちになってしまい、飼い主さんの姿が見えないと不安や恐怖を感じ、問題行動へとつながってしまった訳です。
さらに言えば、分離不安が生じやすいワンちゃんと飼い主さんの関係には、互いに強い依存関係がみられることも事実です。
多くの場合、飼い主さん側も極端な甘やかしや過保護状態にあり、ワンちゃん主導型の接し方になっているはずです。
主導権は飼い主側にあると意識し、強いリーダーシップを示しましょう。
飼い主さんが常に毅然とした態度をワンちゃんに見せ、接することで、ワンちゃんはより飼い主さんを信頼し、安心感を覚えるはずです。
飼い主さんが変わらないとワンちゃんの分離不安は治せないと言ってもいいでしょう。
<分離不安症の治療と予防>
飼い主さんが近くにいなくても「自宅は安心していられる居場所」であることをワンちゃんに理解させることから始めます。
最初は、お風呂に入る間や近所への買い物等、短時間での留守番を繰り返し、大人しく過ごせたら褒めてあげます。
この時、ケージの中に運動や遊びたい欲求を満たすおもちゃを置いて、独りで楽しめる時間を工夫します。
ケージの中に安心できる居場所を作り、そこへおやつを置いてあげるのもお勧めです。
さらに、ワンちゃんに頭を使わせる知育玩具というおもちゃを用いて、どうしたらおやつが得られるか考えさせることにより、退屈防止になり、うまく独りの時間が過ごせるようになります。
ケージを置く場所は、外からの音が聞こえてくる玄関や窓、通気口の近くは避けましょう。
外出の際、心配し過ぎてワンちゃんを目で追ったり、名残惜しい態度を見せたり、帰宅後の過剰なスキンシップはNGです。
余計にワンちゃんに不安を煽ってしまうので逆効果となります。
帰宅した際に、喜ぶワンちゃんと一緒に楽しく相手をしてしまう飼い主さんがいらっしゃいますが、
これもワンちゃんに期待を持たせてしまうので良くありません。
ワンちゃんが興奮している時は無視して相手にせず、落ち着いたら構ってあげて下さい。
注意点として、愛犬が分離不安による問題行動をしても叱りつけてはいけません。
ワンちゃんにとって分離不安による行動は、精神的な不安からくるもので止めようがないものです。
部屋を荒らし、排泄に失敗しても叱らずに淡々と後処理をするようにします。
大切なのは、こうした行動を繰り返し、「独りにされても飼い主さんが必ず帰ってくるのだ」という安心感を植え付けてあげることです。
分離不安症は、ネコちゃんにも認められていますが、コロナ禍の不自由な生活を逆手にとって、愛犬・愛猫とより強いパートナーシップを築き、共にこのウィルス感染を乗り越えましょう。
それでは、また…。
Have a わん&にゃんderful day
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■筆者紹介
永田浩之
獣医師
のっぽ動物病院 院長
神奈川県獣医師会湘南支部長
湘南獣医師会副会長
鎌倉市生まれ
神奈川県立七里ガ浜高等学校卒業
北里大学獣医畜産学部獣医学科卒業
北里大学大学院修士課程獣医畜産学専攻修了
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