森のような、昔の村のような「ちっちゃい辻堂」で
微生物のことを知って暮らしを考えるワークショップ(2月10日)
辻堂駅南口から昭和通りを南に、行き交う車や路線バスをやり過ごしながらコンクリートで固められた路肩を15分ほど歩いていくと、右手に広々とした駐車場。その先に土の空地、奥には建築途中の木造2階建てが見えます。ここが「ちっちゃい辻堂(出口)」。
「ちっちゃい辻堂」は、賃貸の住宅ですが、土とのつながりを大切にし、昔ながらのコモン(共同)のエリアを有する、ちょっとユニークな物件。徒歩で5分ほどの場所にある1軒目の「ちっちゃい辻堂(久根下)」は、昨年竣工しすでに9世帯が住んでいます。建築中の家は2軒目で、6月に完成予定とのこと。
「今日は、ここの裏庭に「微生物舗装」を施すためのワークショップを行います」
仕掛け人の一人、岡部真久さんが言います。岡部さんは辻堂生まれ、「ランドスケープアーキテクト」として緑の側面から建築のあり方を提案する一方、藤沢市の木であるクロマツを増やして、かつての辻堂の景観を回復させる取り組みを行っています。
藤沢、茅ヶ崎をはじめ、日本中が固く舗装され、降った雨がコンクリの表面を通過して川から海に直接流されていく今、都市の土地は乾ききっているといいます。「微生物舗装」とは、雨水を家の敷地外に出すことなく、いわば森のように土にしみこませ、土地を潤す仕組みだそうです。
朝9時半、ワークショップに参加の人たちが集まりだします。近隣の人、遠方から「ちっちゃい辻堂」のことを知って訪れた人、1軒目の微生物舗装にも参加した人など、総勢26人。2歳の男の子は、過去4回行われているワークショップに1回目から参加しているそうです。
まずは岡部さんによる座学。「生物多様性を回復しないと、人間が生きていけない」。人間はその歴史を通じて、99.99%まで森の中で暮らしてきており、都市での生活は、ほんのわずか、つまり生態学的に都市生活に馴染んでいないといいます。腸内細菌はもとより、全身を微生物に囲まれていて、実は、微生物が快適と感じる環境でこそ、人間が心地よく生きられるというのです。
微生物舗装の手順は、まずダブルスコップで地面に穴を開け、そこに落ち葉やワラ、竹炭、もみ殻燻炭を入れて、水のしみこむ道をあちこちに作っていきます。その上にさらにワラや落ち葉、炭を一面に敷き詰め、砕石を層状に重ね、ウッドチップを載せていきます。想像するだけでも大変そうな作業。今日中に終わるのかな。
ワラ、もみ殻は、ちっちゃい辻堂大家さんである石井光さんがコミュニティでやっている田んぼで作った稲から。ウッドチップは造園などで出た伐採材を粉砕したもの。落ち葉も含め廃材を土として生き返らせています。
石井さんはこの土地で13代続く地主さん。「地主というと、不労所得で楽して暮らしている人たち、というイメージを持たれるかもしれません(笑)。私はそれが嫌いでした。でも、地域の生態系を守るために、地主として何ができるか、と考えたことがちっちゃい辻堂を始めるきっかけになりました」
80年前には庭にフクロウがいたという辻堂。今ではいたるところがコンクリート舗装されている地元に、森のような家を建て木を植えることで、自然の風が吹いて小鳥たちも戻ってきているといいます。
さらに目指すのは、昔の農業共同体のような、緩やかなつながり(コモン)のある生活。日本の都市は、個々の家(プライベート)の外側にはすぐに公道のようなパブリックな場所が隣接していますが、ちっちゃい辻堂ではそのあいだにコモンのエリアを設定して住民同士の交流がしやすいようにしています。
棟の間には小さな共有の空間があり、井戸があり鶏がいて、共同購入のテントサウナもあります。その間をつなぐ小径は微生物舗装が施されています。
作業は子ども、女性も関係なく、どんどん進められていきます。穴掘り、砕石の運搬、落ち葉やウッドチップの敷き詰め…土木作業のような肉体労働ですが、みんなレジャーを楽しんでいるように見えます。
作業は順調に進み、時間通り終了。でき上ったばかりのふかふかの微生物舗装の上に、みんなで寝そべり「微生物とのふれあい」を楽しみました。
さまざまな発見や気づきがあるというこのワークショップ、リピーターの人も多いそうです。次回は新棟南側の微生物舗装を4月27日(土)に実施とのこと、募集については、下記サイトを参照してください。
ちっちゃい辻堂
https://chicchaitsujido.life
https://www.instagram.com/min.tsujido/
クロマツプロジェクト
https://www.instagram.com/kuromatsuproject/?hl=ja
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