地域と学生パワー、職人の技が合体
地元で愛されるパンの蔵「風土」
東海道五十三次6番目の宿場、藤沢宿。藤沢橋と小田急藤沢本町駅間の国道沿いと周辺には、宿場町を忍ばせる古い商店や建物が点在しています。
蔵のパン屋さん「風土」は、街道から少し入ったところ、土蔵の外観を残し、パン焼きカフェとして営業しています。
引き戸を開けて中に入ると、暖色に照明された店内。土壁を残した木材とレンガの内装は、しっとりした風情です。取材に訪問したのは1月の平日午後1時頃でしたが、お客さんも多く、パンは残り少なくなっていました。
「今日は、近所の七福神をめぐる方がたくさん来られて、売れ行きが良かったですね」。店長の岩田和憲さん(35歳)は、午後になってようやくパン作りの手が空きました。
パンは20種類、サンドイッチも8種類。1日に200〜300個を作ります。仕込みは午前3時から始めます。こだわりは、自然素材のパン。酵母は干しブドウから作った天然もの。砂糖少なめで甘さを抑えたシンプルな味で、体に良さそう。地元の子育て世代の女性や妊婦さんに「毎日食べても飽きない」と人気です。
岩田さんは埼玉出身。東京や茨城のパン屋さんで腕を磨いたあと、独立のための場所を探していたところ、知人から土蔵を改修してお店にする、という話を紹介されました。初めは「蔵でパン屋?」と思うも、ご自身が作るパンのイメージと、土蔵の自然な包容力が合うのではと、ここでお店を開くことに。
蔵は「関次商店の穀物蔵」として国の登録有形文化財に指定されているもので、蔵保存プロジェクトのもと、パン屋さんに生まれ変わりました。六会に校舎を置く日本大学くらしの生物学科・住まいと環境研究室のゼミの学生さんが、土蔵の改修作業から関わり、パンのプロモーション、売り場のお手伝いまで行いました。
ゼミを指導するのは、日本大学生物資源学部助教・小島仁志さん。
「研究室では、地域と地元事業活性化のための活動を、ゼミとして行っています。旧来からある産業を、学生ならではの視点で見直し、マーケティング手法も駆使し、大学と自治体、民間が一体となった形でのプロモーションです」
2018年から学生が卒業研究として取り組み、エリアの蔵オーナーを回って取材、古びた倉庫をお洒落なパン工房に変身させる手伝いを。さらに研究室のHPでの食レポや、市内各地の催事で出張販売など、PRにも努めたそうです。
新型コロナ下で、店内の座席数を減らすなどの対応を余儀なくされましたが、テイクアウトのお客も増えるなど、地元のファンも増加、注目を集めています。
関次商店 パンの蔵「風土」
〒152-0053 藤沢市本町4−5−20
営業時間:9:00〜15:00(売り切れ次第終了)
定休日:月・火
HP