動物病院院長、湘南の頼れる獣医師”のっぽ先生”による ペットについての連載コーナー。ペット好きなら知っておきたい獣医学のお話です。
Vol.01「ワンちゃんの熱中症」はこちら!
Vol.02「子犬の社会化」はこちら!
Vol.03「ワンちゃんの皮膚病について」はこちら!
Vol.04「ペットと防災」はこちら!
みなさん、こんにちは!
お元気ですか?
今回は、子猫を保護し、新しい家族として迎える方のために、子猫の上手な哺乳・離乳の手順やそのコツについてお話したいと思います。
子猫を保護したらはじめにしたいこと
健康状態、雌雄の確認をします。これで生後何日くらいかのかを推測します。
毎日決まった時間に体重を測定し、元気食欲、排便排尿、発育状態、その他気づいたことを記録するようにします。
そして、注意すべきことは感染症です。
同居猫から子猫に感染症がうつらないように、逆に子猫がうつしてしまわないように細心の注意が必要です。
Q.具体的には?
A.タオル、食器、トイレ、雑巾などは専用のものを用意し、
子猫を触る前後に石鹸でよく手を洗います。
できれば子猫を触る人を特定するとよいでしょう。
健康状態が良くなければまず保温
子猫の健康状態が良くない場合は、低体温、低血糖、脱水を悪化させないように、まず保温が最優先になります。
寝床の温度は30℃、湿度は50~60%あれば乾燥が防げます。
保温ヒーター、湯たんぽ、使い捨てカイロなどで保温します。この時、低温やけどには注意して下さい。
哺乳の仕方
子猫が舌や口を動かすことができれば、次は哺乳です。
授乳温度は35~38℃で、飲ませる前に授乳者の手に垂らし、熱すぎないか確認します。
哺乳をする時は子猫を腹這いにさせ、顔を少し上に向けて乳首を口の正面から真っすぐにくわえさせます。
きちんと吸うことができれば、ゴクゴク飲み込む音が聞こえ、耳が後方に引かれて飲み込むタイミングでバタバタと動きます。
母猫からの授乳期間が長かった子猫ほど、ゴムの乳首を拒否する傾向がありますが、徐々に慣れてきます。
哺乳瓶は使用する度ごとによく洗い、煮沸消毒する必要があります。
ミルクの作り置きはせず、飲み切る量を調整して下さい。
溶かしたミルクは1時間程度で廃棄するようにしましょう。
猫用の人工ミルクは各種製品が市販されていますが、あれこれ試すのではなく種類を限った方が、便の状態が安定します。
ミルクからフードへの移行
生後3~4週間頃になると、発育の早い子猫は浅い皿からミルクを舐めることができるようになるので、
1週間ほどかけて皿から飲む量を徐々に増やしていきます。
4週齢を過ぎる頃になると乳前歯が萌出してくるので、ミルクにやわらかい缶フードなどを混ぜて食べる練習を始めます。
ミルクを吸う口の使い方と固形食を食べる口の使い方は全く違うので、時間をかけて移行していきます。
5週齢を超える頃には乳奥歯が萌出し始めるので、缶フードに加えドライフードも少量混ぜます。
離乳は同腹子でも成長に差があるので、個々の成長を見極めながら6~9週齢で完了するようにしましょう。
各フードへの移行期に、時々軟便や下痢が見られますが、これは腸の発達が未熟で、消化機能が不十分なために起こります。
いきなり量を増やすと便の状態が崩れるので、一段階前へ戻り、便の状態を良くしてから次へ進みます。
排泄は眠りから覚めた後、食後、遊んでいる時にしやすく、子猫の自力の排泄は3週齢以降となります。
それまでは人が子猫の陰部を刺激して排泄させる必要があります。
ミルクを哺乳している頃は数日に一回の排便でも正常ですが、固形食になると毎日排便するのが正常です。
また、離乳期には腸内寄生虫が成長することで、下痢の原因となることもあります。
さらに母猫からの移行抗体(免疫)が消失しはじめるころでもあるので、様々な感染症を原因とする腸症(下痢)を引き起こし始める時期と重なります。
離乳に伴う食事内容の変更による便の異常があるかどうかの鑑別が極めて重要です。
子猫を保護した時、子猫の哺育に関する正しい知識を持つことは、小さな命を救う大きな手立てになります。
まずは動物病院へ連れていき、診察を受けてください。
それでは、また次回。
Have a ニャンderful day !
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■筆者紹介
永田浩之
獣医師
のっぽ動物病院 院長
神奈川県獣医師会湘南支部長
湘南獣医師会副会長
鎌倉市生まれ
神奈川県立七里ガ浜高等学校卒業
北里大学獣医畜産学部獣医学科卒業
北里大学大学院修士課程獣医畜産学専攻修了
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