寒い季節になると、熱々の中華料理が恋しくなります。
中華料理の名わき役の1つが、キクラゲです。プルプルでコリコリの食感はもちろんのこと、黒い色は彩り豊かな料理を引き締めてくれます。
湘南地方では、キクラゲの生産は夏場が中心です。夏場に需要が減るシイタケの代わりに栽培しています。
そんなとき、直売所「米ディハウスくげぬま」の店長さんから「一年中出荷している農家さんがいるよ」と、教えてもらいました。さっそく伺ってみると、そこは…。
案内人は、JAさがみの農アンバサダーLioさんです。
取材にお邪魔したのは、藤沢市石川にある長嶋園芸さん。栽培しているところに案内してもらうと…。
え? ここは地下室? 秘密基地??
中はトンネルが続いていました。
壁をみると素掘りで、ノミのあともくっきりとわかります。
頭の中には、インディー・ジョーンズやサンダーバードの音楽が流れています。
じつはこれ、第二次世界大戦中の防空壕の跡です。
昭和30年代に掘り広げて、室(むろ)にしました。しばらくは春のウド栽培に使っていましたが、2年前からキクラゲ栽培も手掛けるようになりました。
そのまま奥に行くと、ありました、ありました。ここがキクラゲ栽培をしている室(むろ)です。
キクラゲはこんなふうに生えています。
菌床(きんしょう)というブロックに生やして育てます。
防空壕の中は、夏も冬も温度がほぼ一定で、湿度や明るさも制御しやすい環境です。この夏の猛暑も、おかげさまで大きな影響もなかったそうです。
とはいうものの、おいしいキクラゲにするには、絶え間ない調整が必要です。
温度・湿度はもとより、明るさも。「本が読める程度の暗さ」がキクラゲ好みだとか。そして、酸素も必要です。そうか!光合成をしないから、二酸化炭素でなく酸素が必要なんですね。
こんなダクトを作って、外気を送りこんでます。
大きく育ったら、収穫です。
手で一つ一つ丁寧に摘み取っていきます。
目視で品質を確認し、重さを量ってパックに詰めます。
こちらが、藤沢産の生キクラゲです。
直売所には「冬でも地元の生キクラゲが食べらるなんて!」という、喜びの声も届いています。
米ディハウスくげぬまのほか、わいわい市藤沢店、グリーンセンター渋谷に出荷しています。
冬野菜と一緒に炒めたり、タンメンに入れたり、これからの季節も大活躍します。
いま、世界中がきな臭くなっています。戦火を逃れて防空壕に避難するのではなく、防空壕でキクラゲを栽培しているという平和を、ありがたく感じます。
地元産キクラゲをたっぷり使ったタンメンを食べながら、平和な世の中になりますようにと願いました。
取材協力
長嶋園芸
米ディハウスくげぬま
JAさがみHPには、湘南地区の野菜・農産物情報が満載です!
https://ja-sagami.or.jp