みなさん、お元気ですか?
今回は、『ペットの外耳炎』についてお話してみたいと思います。
耳の病気はワンちゃんで特に起こりやすく、来院理由の上位に挙げられます。
耳に炎症が起きた場合、その炎症の及んでいる範囲によって外耳炎・中耳炎・内耳炎と呼び分けます。
悪化すると恐ろしい耳の病気
一般的に、最初は外耳炎から始まり、これが悪化すると中耳炎、内耳炎と進行し、最悪の場合には脳炎を起こして死に至る場合もあります。
悪化してしまうと恐ろしい外耳炎を適切に管理し、内耳炎や脳炎まで波及させない様に気を付けないといけません。
耳は平衡聴覚器と呼ばれるように、音を伝達・感知する部分と、身体の平衡感覚にかかわる部分からなります。
解剖学的には外耳、中耳、内耳の3つの領域に分かれています。
▪️外耳炎の原因はさまざま
外耳は耳介・外耳道からなり、ワンちゃんの品種によって大きさや形は様々です。
外耳道は入口から下方向に伸びる垂直耳道と、垂直耳道からL字状に約75度曲がって側頭骨側へ向かう水平耳道に分けられ、そこに存在する分泌腺からの混合物が耳垢になります。
外耳炎が起こる原因はたくさんありますが、根本的な発生原因、悪化長期化させる要因、外耳炎になりやすい要素の三つに分けることができます。そしてこれらが互いに影響を与えています。
[根本的な発生原因]
アレルギー性皮膚炎、異物(毛・植物・砂・綿棒の先端など)、耳ダニの寄生、内分泌疾患(甲状腺機能低下症)などの原発因子
[悪化・長期化させる要因]
細菌感染、酵母菌感染、耳のケアのやり過ぎ(綿棒による擦過傷)などの続発・永続化因子(発生した外耳炎をより悪化・長期化させる要因)
[外耳炎になりやすい要素]
外耳道が狭い犬種、耳垢が多い犬種、アレルギー性皮膚炎の好発犬種などの素因
▪️症状に思い当たったら…
内耳炎は外耳炎から波及した炎症が中耳炎へと進行し、さらに悪化した結果起こると考えられています。
外耳炎・内耳炎の症状ですが、外耳炎では耳介が赤くなる、腫れる、耳が臭くなる、耳掃除をしてもすぐ耳垢が溜まってくる、粘液やクリーム状の耳だれが出ている、後肢で耳を掻く、耳を床などに擦りつける、しきりに頭を振る、顔や耳に触られるのを嫌がる、痛がる等です。
内耳炎では斜頸(頭が傾く)、眼振(眼球が振り子のように揺れる)、左右どちらか一方向(炎症の起こっている側)に回って倒れる、足がふらつく、もつれる、立てない、歩けない、嘔吐等です。
耳の汚れに気付いたら、診察を
▪️治療は? 外耳炎、内耳炎での違い
治療は外耳炎の場合、抗菌薬や抗真菌薬、駆虫薬での治療を行います。
また、外耳道が不潔な状態では治療薬の効果は不十分であるため、耳の洗浄で外耳道内の分泌物を洗い流して清潔にします。
一方、内耳炎では炎症が及んでいる範囲を確認するためにCTやMRIなどの画像検査が必要な上、内耳炎は命にかかわることも多いため、抗菌薬を用いた集中治療を行いながら、同時に併発している病気はないか等を慎重に確認し、合わせた治療が必要になります。
▪️家庭でのケアは? 汚れに気がついたら?
耳には本来、自ら外耳道の中を清潔に保つ機能(上皮移動)が備わっているので、古い皮膚は耳垢と共に耳道口へ排出される仕組みが備わっています。
したがって家庭でのケアは、耳道口や耳介に付いている汚れをコットンで優しく拭き取るくらいで十分で、綿棒を奥まで突っ込み、耳垢を取ろうとする行為は、耳垢を奥に押し込んでしまい逆効果になります。
耳道に長い毛が密生している犬種では、これが炎症の原因となるため、抜くようにしましょう。
外耳道に溜まった耳垢は外耳炎が起きている可能性を意味し、耳への不快感や痛みがストレスとなってしまいます。
耳の汚れに気付いたら、診察を受けることをお勧めします。
それでは、また…。
Have a わん&にゃんderful day
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■筆者紹介
永田浩之
獣医師
のっぽ動物病院 院長
神奈川県獣医師会湘南支部長
湘南臨床研究会会長
鎌倉市生まれ
神奈川県立七里ガ浜高等学校卒業
北里大学獣医畜産学部獣医学科卒業
北里大学大学院修士課程獣医畜産学専攻修了
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